シアワセ∞経路
第15章 雨が上がったら
ここにいるならバレないと思った私は、歩くスピードをいつもの速さに戻した。
強かった雨は霧雨のようになっていて、先ほどより弱まってはいるもののまだ完璧には止まない。
雨の中を走って、髪もいくら手櫛でとかしても乱れてしまっていた。
どうして思うようにいかないんだろう。
自分の情けなさに悔しくて、下唇をギリッと噛んだ。
「……待って、って言ってるだろ」
――……!!
ソラに後ろから左腕をグイッとつかまれて、肩が上がる。
もっと公園の奥に行って、どこかに隠れていればよかった。
そうしていれば、ソラに追いつかれることもなかったのかもしれない。
また胸が苦しくなってきて、目の前がじわっと増えてくる涙でぼやける。
「……離して。私から話すことなんて何も……ないから」
「……じゃあ、俺の話だけ聞いて」
「…………」
握られていた左腕をそっと離されたけれど、後ろを振り向いてソラの顔を見る余裕がなかった。
「……この前、好きって言ってもらえてすごく嬉しかった。……ありがとう」
ソラは焦りもせずに、落ち着いたトーンで話す。
顔を合わせなくても、どんな表情で言っているのかなんとなく分かった。
"ありがとう”って言われたら、どう返せばいいんだろう。
また頭が真っ白になって、根が張ったように足までも動かなくなる。