シアワセ∞経路
第17章 もし出逢っていなかったら
「前に言っただろ?"ずるいやつが得する世の中”だって。
どうして自分がこんなに不幸になってるのかも気づけない鈍感だから泣きを見るんだよ」
佳菜美ちゃんにいじめられていることには気づいていた。
でも、その裏で颯太にまで裏切られていたなんて全く知らなかった。
――嘘つき。……そんなの知ってたはずなのに……。
こんな嘘はずるい。
でも、偽りだったとしても一緒に過ごした時間があったのは本当だった。
ゆっくりと深呼吸をして、胸に手を当てて自分を取り戻す。
急いで、涙もぬぐった。
「颯太の言ったとおり、私は鈍くて馬鹿だよ。だけど、馬鹿な私でも颯太は優しくて素直な人だって言うのは分かる」
「は?」
「踏み台にした私に、最後はこうやって教えてくれるんだから優しいよ。
本当にずるい人なら、騙したままずっと黙ってるんじゃないかな」
「…………」
指を組んで黙って俯く颯太を何も言わずに見つめる。
こんな姿なんて見たことがなかった。
いつもお兄さんのようにしっかりしていて、自分をしっかり持っていてリードしてくれた。
それが善意じゃなかったとしても、私にとっては嫌ではなかった。