テキストサイズ

シアワセ∞経路

第17章 もし出逢っていなかったら




「ああ……。風子みたいに真っ直ぐにぶつかってきて、中身までちゃんと見ようとしてくれる女は初めてだったよ」






困ったように微笑んで、やっと私に目を向けてくれた。





触れ合う距離にいたのに、ずっと見ることのできなかった颯太の本当の顔。






こうやってお互い素直になって話せるんだから、佳菜美ちゃんに協力していなかったらいい友達になれていたのかもしれない。





残った悔いを心の奥に閉まう。





微笑み返して、この場を後にしようとドアへ向かった。








「ひとつだけ教えてほしい」






ドアを開けようと手を掛けた時だった。



後ろから聞こえてきた声に、振り向かないで足を止める。








「……どうやったら、オレのこと……好きになれてた?」






引き留めるかのように掛けてきた言葉が、私の心を揺らす。





「……最初から普通に出会って、真っ直ぐに思ってくれていたら好きになってた。……なんてね」






今できる精一杯の笑顔を颯太に向けてドアを閉めた。





モヤモヤしていた悩み事を解決したはずなのに、最後に言われた言葉のせいで胸が苦しくなる。






これでいいのに。今度は間違っていないのに。







大切なものをなくした気分が拭えない。







頬をポンポンッと二回たたいて、気持ちを切り替えられるように紛らわそうとする。





もう前に進むって決めたから――。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ