シアワセ∞経路
第5章 共力者
「うふふ。大空くんったら、相変わらずなのね。じゃあ、遠慮なくあたしが勝手に書いておくね。えっとー、日誌は……」
「ここ」
日誌を取ろうとしたソラと女の子の手がぶつかった。
「あっ、ごめんね」
「……いや、こちらこそすみません」
女の子は少し顔を赤くしながら笑みを見せた。
ソラもそれにつられて少し笑っていたように見えた。
いい感じになっていて、私が心配するほどじゃなかった。
「じゃあまた来週も頑張ろうね。大空くん、ばいばい」
手を振って去って行った女の子の笑顔は、私でも可愛いなって思うほどで。
誰が見ても、絶対に好印象を持つような明るい笑顔だった。
「うわー。少しでも話せた!しかも、あの子はクラスで一番可愛いって言われてる子なんだぞ。すごいだろ、風子!」
いつも冷静でいるのに、目を輝かせて今までに見たことがないくらいにテンションを高くして喜んでいた。
「うん、すごい。よかったね。これからもその調子でいけば大丈夫だよ」
「風子がいつも一緒にいたおかげで、女の子と話す練習になってたのかもしれないな」
本当に嬉しそう。
私もソラが女嫌い克服の一歩を進んで……。
あれ……、どうしてかな……。
いいことをしているはずなのに、私の心の温度は上がらない。
一緒に喜んであげなくちゃいけないのに、口角も不自然に上げることしかできない。
「あの子と話せたなら、今度は他の女の子もいけそうな気がするよ」
「うん……。可愛い子と話せたんだから次もきっと……」
私以外の可愛い女の子と……。
「風子?」
「ううん、なんでもない」
可愛い……か……。
いいな、可愛く生まれて。
それだけで、話しかけられた男子は喜ぶんだから羨ましい。
ううん……、私が羨ましいって思ったのはすべての男子じゃなくて隣にいてくれるソラが喜んだからだ。
私といる時と大違いで……悔しかったんだ。