《番犬女》は俺のもの
第11章 カリスマな御三人
2年の階に着こうというとき
「──!」
上を見た茜の前を零が横切った。
「…しの…ッ」
咄嗟に呼び止めようとした自分に気がついて茜は思いとどまる。何故、声をかける必要があるのか。
「…?」
前を横切った零はそのまま階段を上りはじめた。
3年の教室に用でもあるのだろうか?
茜は不思議に思う。
けれどここで、零だけに注目していた茜は、彼と同じように階段を上がる人影に気が付いた。
「今のは…たしかラブレターを送った」
零と一緒に階段を上がっていったのは、彼の靴箱にラブレターを入れた3組の女生徒だった。
──細井さん、またの名を絵美ちゃん。
無意識のうちに
茜はその二人の後を追って2年の階も通りすぎたのだった──。