
触れたくない。
第4章 四
「なっ七瀬さんひどいです…!!!」
私は半分泣きそうになりながら避難を彼に浴びせた。
もしかして私はこのまま干からびて死んでしまうのではないか。
そんな馬鹿げた妄想をしながら畳に突っ伏していると、
「っ、」
突然腕を力強く引っ張られ、驚いた瞬間。
ひんやりとしたものが唇に触れて、目を見開いた。
「…ッんっ」
そして口の中に流れ込んできたものにはっとする。
水……?
コク、とまた流れてきた瞬間、私は七瀬さんの首に腕を回し、貪るように唇を押さえつけた。
「んっ…んん、」
コク…コク…、
そして最後の水を飲み込むと、力が抜けたように彼の膝の上にぼふりと倒れこんだ。
「少しは枯れずにすんだかい」
おかしそうに笑みを零す七瀬さん。
意地の悪い人だ。狭いよ。けれど、
「…まだ欲しいって言ったらくれますか」
「いくらでも」
そんな彼を好きになってしまった時点で、私は負けているんだ。
キュウ。愛しくて胸が締め付けられる。
この人が、どうしようもなく愛しい。
「欲しいです」
私は顔をあげ、涼やかな彼の瞳を見つめながらそう言った。
月明かりに照らされ、梔子色に染められた彼の瞳がゆったりとカーブをかく。
「楽しいことをしながら、君の言う楽しい話しを聞くのも存外悪くない」
あ。と言葉を零した瞬間、彼は私の頬を両手で包み、今までにないほどの優しい口付けをくれた。
