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凍夜

第3章 花


私は一度、ススキノの中を静香が、女の子を連れて歩いている姿を見た事があった。

静香は細身で髪の毛が長く姿勢のよい若い女性だった。黒い服がよく似合っていた。

その時私は銀さんと一緒に、トンカツを食べに行こうと歩いていたので、銀さんが、通りを挟んだ向こうを歩く静香に、一緒にどうだと声をかけた。

静香は、はにかむように笑い首を振って断ると丁寧に一礼して去った。

私と銀さんは、南五条通りを西へ歩き、どん詰まりの所にある、老舗のトンカツ屋に入った。二人でカツ丼を頼み、「今のが静香だ。」とビール瓶の詮を抜いた。「連れていたのはレイジとの子だ。」私は銀さんにコーラを注いでもらいながら、銀さんの苦笑した顔を見つめていた。

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