その手で触れて確かめて
第5章 小さな恋の物語(O × O)
自分が蒔いた種とは言え、
大野智にあんな態度をとられたら、正直ヘコんでしまう。
が、そんなことに臆することなく、役なんだからと、
芝居の範疇なんだからと開き直るしかないような気がして、
舞台に上がった。
が…
実際、役になりきって、目の前に横たわる大野智を目の当たりにすると、
どうしても、邪な自分が顔を覗かせる。
リアリティーを追求するあまり、思わず、とか言って、
本当にキス、出来るんじゃないか、って。
大野だって、そういう理由なら許してくれんじゃないか、って…
…しっかし、キレイだな…。
大野智の顔を上から見下ろし、改めてその顔をじっくり見てみる。
ファミレスで初めて見た時からずっとそう思ってた。
あの時は女の子だ、って本気で思ってたし、まさか、同じ高校で、
しかも、男子校で再会出来るなんて夢にも思っていなかった。
シナリオでは、もっと後から出てくるはずたったけど、
やっぱり我慢できなくて、
緊張からか、きゅ、と閉じたり薄く開いたりしながら濡れたように光る唇に、
吸い寄せられるようにキスをしていた。
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