その手で触れて確かめて
第5章 小さな恋の物語(O × O)
それから、
来る日も来る日も大野智は俺と口も聞いてくれず、
目も合わそうとせず、
俺を無視し続けた。
嫌われたまま大野智との関係(?)を終わらせたくなかった俺は、
校門で大野が出てくるのを待った。
思った通り、俺の姿を見ると、彼はあからさまにイヤそうな顔をした。
そして、そのまま足早に行き過ぎようと、見る間に遠ざかって行く背中を走って追い掛けた。
「あのっ…!」
まるで聞こえていないかのように、
俺から逃れようとさらに歩調が早くなる。
「ごめん!!俺が悪かった!!」
すると、ピタリ、と足が止まり、こちらを見た。
「ちょっと………ふざけすぎた。だから…」
大野智は唇を噛みしめ、俺を睨み付けた。
「ふざけてた?」
引きつったような笑みを浮かべながら、俺との距離を詰めるように歩み寄る。
「お前、ふざけて男相手に大勢の前でよくあんなこと出来るな?」
「いや…だから…その…」
…そうだよな?やっぱ、怒るよな?
「…ったく、冗談じゃない。あんなのが初めてだなんて…」
そう、独り言のように毒づきながら目を逸らした。
そうか…初めてだったんだ…
…って…
…えっ?…い、今、初めてって…?
「お、大野、お前、もしかして……」
俺の指摘に大野智は小さく、あ、と声をあげると、
耳までも朱に染め、くる、と背を向け走り出した。
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