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その手で触れて確かめて

第5章 小さな恋の物語(O × O)



高校を卒業後、


俺たちはそれぞれの家の事情で違う大学に進学して、



それからしばらく音信不通になって、



ようやく再会を果たしたのは、


高校を卒業してから7年後。



大野の方から雅紀を通じて連絡してきた。



待ち合わせ場所に指定されたホテルのバーに行くと、



あの頃と変わらない、華奢な背中が目に飛び込んでくる。



変わったところ、と言えば、



バーカウンターに座って、洒落たスーツを着こなし、水割りが入ったグラスを傾ける。



それでも隠しきれない、滲み出るオーラ。



俺だけじゃない、


雅紀も、他のクラスメートも、先輩後輩も、


すれ違うすべての人間を惹き付けて離さないオーラを放つこの男。




心臓が破裂しそうなぐらいに立てる音を聞かれないよう、足音を忍ばせ彼に近づく。



それでも、気配で察してちら、と後ろを振り返る。


振り返り、こちらを見る瞳に足がすくんでしまう。


俺としたことが…



口角をあげ自嘲気味に笑う。



それでも、俺は、高校時代、名前ではなく、そいつの放つ強烈なオーラと、


今でも頭を占拠して離れない、あの姿から、



自然とコイツのことを、俺はこう呼んでいた。










「よう、『姫』、久しぶり。」





「小さな恋の物語」 end.

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