その手で触れて確かめて
第6章 二宮氏の憂鬱
「あのな、いくらコストのことを気にすんなって言ったから、って、限度ってもんがあるだろ?」
今日も社長室から怒号が響き渡る。
「…言い訳はいいから!?早く企画書を作り直せ!!分かったな?」
ったく、と、頭を片手で抱えながら受話器を乱暴に置いた。
程なく内線電話が鳴り出して、
これまた機嫌悪そうに相づちを打っていた。
「はぁー、全く、どいつもこいつも…」
大きくため息をつきながら机にぺったり顔をくっつける社長。
「先ほど相葉社長からお電話がありました。」
コーヒーを持ってきたことを知らしめるために、
社長の耳元にわざと音を立てるようにコーヒーカップを置いた。
「またあ?」
「ご相談したいことがあるそうです。」
「雅紀がそう言う時、って、絶対潤のことなんだよなあ…。」
コーヒーを一口飲んでまた、机に突っ伏してしまう。
社長が口にしていた「雅紀」と「潤」、
「雅紀」こと相葉社長は以前、うちの社長とは上司と部下の関係にあった方で、片や「潤」さんはその相葉社長と特別な関係にあり社長の弟。
そして、
実はこのお二人、
最近、一緒に住み始めたばかりだったんです。
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