その手で触れて確かめて
第6章 二宮氏の憂鬱
「相葉社長、後でこちらにいらっしゃるそうです。」
「も〜俺にどうしろ、って言うんだよ!?」
再び、机に顔を押し付けて、子供のように手足をばたつかせた。
ホントに今日の社長は取り分けイライラしている。
と、言うのも、
相葉社長のところと共同プロジェクトの一環として立ち上げたリゾート開発。
それに先駆け、来春オープン予定のホテルの目玉となるはずだったフレンチレストランの料理長として迎えるハズだったシェフが、
都内の大手老舗ホテルにまんまと掠め取られてしまうという事態に。
松岡の傘下に入って最初の大失態、とあって、
その傘下からの離脱を目論む社長の中では、
次に控える社内コンペは絶対失敗できないとの位置づけでした。
そんなピリピリしたムードの中、
プライベートな相談を四六時中持ちかけてくる相葉社長に、
社長は不快感を露にしていました。
その上、私の失言も重なったとあって、
私、二宮が、
文字通り、社長の目の上のたんこぶを、
不覚にも一刺ししてしまった、というワケなんです。
「なあ、二宮。」
「はい?」
「兄さん、元気そうだった?」
「ええ、この間そうお伝えしたはずですが?」
「…いいなあ、兄さんからメールもらえて…」
「……」
こういう状態を針のむしろに座る、と言うんですかね?
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