その手で触れて確かめて
第7章 甘くて、甘い…(A × M)
もうすぐ翔の誕生日、ってことで、
甘さ控えめの、低カロリーなチーズケーキ持参で翔のところへ向かった。
「はい、誕生日、おめでと。」
「………。」
「何、青くなってんの?」
「あ、いや…」
「二宮さんもよかったらどうぞ。」
「あ、じゃあ、私、コーヒー、淹れてきますね?」
ケーキの入った白い箱の蓋を翔の目の前で開けて見せた。
「あ、チーズケーキ♪」
途端、蒼白だった顔に生気が戻り、目が子供のように輝く。
「甘さ控えめ、低カロリーなヤツに仕上げてきたよ?」
「やったあ♪うまそ。」
予め、ナイフで丁寧に切り分けてあった一切れを、
コーヒーと一緒に二宮さんが持ってきたフォークで一口分掬って翔の口元へ持っていった。
「はい、あーんして?お兄ちゃん?」
「自分で食えるから!?てか、お兄ちゃん、ってなんだよ!?」
「いいからいから♪サービスだよ?あ、そうだ!!ね、二宮さん?」
「はい?」
「写真、撮ってよ?」
「いいですよ?」
二宮さんは食べかけのケーキを脇に置くと、ポケットからスマホを取り出した。
「ほら、翔、口開けて!」
「だから、一人で食えるから!!」
ぶつくさ言う翔の口の中に、有無を言わさずケーキを放り込んだ。
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