その手で触れて確かめて
第7章 甘くて、甘い…(A × M)
覚醒しきれていない頭でスマホの時間を見ようと腕を動かす。
すると、嗅ぎ慣れたタバコの香りがふわり、と漂ったような気がして慌てて飛び起きると、
肩先からばさり、と背広が床に落ちた。
「…起きたか?」
雅紀だった。
「起こしてくれても良かったのに。」
「気持ち良さそうに寝ているのを、か?」
雅紀は、手前の料理が乗った皿を手にするとレンジの中に放り込んだ。
「いないのかと思ってた。」
雅紀は、俺の顔も見ないで話し続ける。
「いない方が良かった?」
「まさか…」
「ホント…に?」
雅紀は、俺に背を向けたまま大きくため息をつき、
突然振り向きこちらへ歩み寄ると、
俺の背中に腕を回し抱きよせた。
「…ここが一番、落ち着くんだよ。」
「ま…さき…?」
抱きしめる力が強くなって、胸が熱くなる。
「不安になるだろが!?黙っていなくなると。」
「…ごめん。」
「まったく…何してたんだ?一体。」
「それは…」
「…何だ?言えないのか?」
「…じゃ、ないけど…んっ?」
壁に体を押し付けられ、雅紀に唇を奪われる。
「口で言えないなら、カラダに聞くまでだ。」
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