その手で触れて確かめて
第2章 劣情と熱情と純情と (A × M )
「まだ、兄さんと会ってんの?」
「呼び出されれば、な。」
「仮にも社長でしょ?そんなヒマあんの?」
「都合がつけば、の話だからな?」
「ふーん…。」
気の無い素振りで相槌を打つ。
趣味でやってる株価のチェックをしながら。
「最近忙しそうじゃん?よく都合がつけられるね?」
「嫌味か?」
「イヤ、必死だなあ、と思って…。」
「悪いか?」
「別に?」
「君こそ必死な気がするけど?」
「だって、家族だもん。道踏み外してたら正してあげないと…。」
「なるほど。」
煙草を咥え、パソコンの画面に見入ったまま、鼻で笑う。
「何笑ってんの?」
「…別に?」
「ムカつく…。」
スマホを仕舞うと、空き缶をわざとテーブルに音を立てて置いてやる。
「…あのさ、1コいい?」
「何だ?」
「客が来てるときぐらい仕事止めてくんない?」
「アポもとらないでくる不躾な客でもか?」
「恋人の弟でも?」
「恋人…か。」
「セフレの方が良かったっけ?」
不気味な笑みを浮かべると、
相葉雅紀は煙草を乱暴に揉み消した。
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