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その手で触れて確かめて

第9章 蜜月 〜side A〜 ② (M × S)



翔side


「どっちでもいいけど…」



…変なやつ。何か、話があったんじゃないのかよ!?


と、シャワーのコックを捻った時、



鏡越しに人影が過った、と思ったら、



潤がバスルームに入ってきた。



やれやれ、ここでも相手しなきゃなんないのか、と思うと正直うんざりしたが、



ここは、バスルーム。



すぐに体も洗えるし、後処理も出来るし…



そう思ったら割と平静でいられる自分に驚いた。



でも、


潤が背後に近づく気配を感じて思わず身構える。



肩に手が置かれた途端、


あの時の、カビ臭い匂いに混ざって鼻を突いてくる欲の匂いに思わず吐き気を覚えて座り込む。



潤「翔!?」


「いや…やめて…」


潤「気分でも悪いのか?」


「も…許して…」



激しく打ち付けるシャワー故なのか、



自分の涙故なのか、



視界が、まるで水没してゆくみたいに揺らいだ。



「お願いだから…」



俺は、足元から崩れ落ちてゆくように、



その場にしゃがみこんだ。






潤「落ち着いた?」



潤は、バスタブに凭れるように湯に浸かっていた俺を、バスタブの外側から、宥めるように後ろからずっと抱きしめていてくれた。



「うん…。」


潤「じゃ、後処理してやっから。」


「えっ!?い、いいよ?自分で出来るし…」



弾かれたように振り返って潤の顔を見ると、



あまり見たことのないぐらいの柔らかい笑みを浮かべていた。


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