その手で触れて確かめて
第9章 蜜月 〜side A〜 ② (M × S)
翔side
繰り返し体に与えられる刺激が、段々理性を狂わせていく。
仕舞いには、冷静な判断ができなくなって、
肌に触れるもの、感じるものすべてが愛しい存在に変換されてゆく。
もちろん、目の前のコイツも潤ではなく、
「智」だ。
今、俺は智にくちづけられている。
智に愛撫されている。
智に…抱かれてる。
智の綺麗な指先が肌に触れ、
智の綺麗な唇が肌を這い、
智の吐息が耳元を擽る。
「もっと…智…。」
その愛しい体にしがみつき、愛玩されることを乞う。
その艶やかな唇から自分の名前が紡がれることを願う。
お願いだから、その深い色した目の中に俺だけを映して、
耳で俺の声だけ聞いて、
この世界で、貴方のことを愛してるのは俺だけだと、
五感の全てで感じさせて…。
やがて、後孔に身に覚えのある圧迫感を感じると、
一気に夢心地から現実へと引き戻される。
目の前で見えている顔が、
息づかいが、
その全てが貴方じゃなくなる。
そうだよな?貴方が俺にそんなことするはず…ない。
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