その手で触れて確かめて
第9章 蜜月 〜side A〜 ② (M × S)
潤side
俺の体にしがみつくように巻かれていた両腕が弛緩して、
しなだれかかるように翔は意識を飛ばした。
肩先で穏やかな呼吸を繰り返す翔の体を剥がし、ベッドに寝かせて、
その頬に残った涙の跡を指先で拭う。
意識を飛ばす寸前に、
翔の唇から零れた名前に、
胸が掻き毟られる。
相変わらず、深く静かな呼吸を繰り返す翔の体を抱きしめる。
「翔…」
抱きしめながら、
近くて遠い存在になってしまった人の名前を呼んだ。
もし、初めて会った時、
もっと優しくしてやったら、貴方は俺にも優しくしてくれてたのかな?
笑ってくれてたのかな?
抱きしめてくれたのかな?
もう…遅すぎたのかな?
その背中に顔を押し付け、鼻を啜る。
すると、派手な衣擦れの音がして、体の向きを反転させた翔と目が合った。
翔「泣いてんのか?」
心配そうに見つめる大きな黒い瞳。
「泣いてなんか…」
翔「嘘つけ。」
「ホントだって…え…!」
翔の腕が背中に回されて、いきなり心音が近くなる。
翔「ガキのくせに、いきがんじゃないの!!」
頭をがしゃがしゃ撫で、笑う。
翔「さっさとお寝んねしなさい、ってんだろ?」
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