その手で触れて確かめて
第10章 お2階さん。( A × N )
で、結局、
俺は、とっぷり日も暮れてしまいまだ不慣れな土地の徒歩20分先にあるというコンビニへ行くべく、
財布を持ち、上着を羽織った。
すると、2階の部屋で人の足音が聞こえてきて、
俺はあることを思い付く。
…そうだ!上の人に借りちゃえば…。
お酢なんて、明日、明るくなったら改めてスーパーに買いに行けばいいじゃん。
早速、俺は部屋を飛び出すと、
2階へ通じる鉄筋の階段を1段づつ飛ばしながらかけあがってゆく。
そして…
和「はい?」
呼び鈴を鳴らすと、パタパタと足音を響かせながら戸口へと走りよる足音が近づいてきて、
ドア越しに『どちら様?』と訊ねてきた。
「下の者なんですけど…」
ガチャガチャと鍵を開ける音がして、
色白のひょろっとした男が顔を覗かせた。
和「何?」
あからさまにイヤな顔をされたことに気づかないフリをしながら、
俺は本来の目的である「酢を借りたい」、という旨を申し出る。
和「…ちょっと待ってて?」
男はパタパタとスリッパを響かせ奥へと引っ込む。
和「はい。」
そして、やっぱり迷惑そうに俺に酢を手渡してドアを閉めた。
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