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その手で触れて確かめて

第10章 お2階さん。( A × N )



オリエンテーションも終わって、



講堂から出ようと席を立った時、


不意に後ろから肩を掴まれる。



びっくりして振り返ると、



まだ、記憶に新しい、


色白の不機嫌そうな顔をした男が俺の後ろに立っていた。



誰…だっけ?



が、疑問はすぐに解決した。





和「アンタでしょ?この間、俺んとこに酢を借りに来たヤツ、って?」


「この間の…?」


和「アンタにあげたワケじゃないんだからさっさと返してよ?」



やっぱり、不機嫌そうに言う。



「…すいません。」



彼は言いたいことだけを言うと、さっさと講堂から出ていった。



…同じ大学の人だったんだ。





俺はその足でスーパーに立ち寄り、酢を2本購入し家路についた。



アパートにつくと、そのまま自分の部屋には戻らず2階へと一段飛ばしで鉄筋の階段を駆け上がっていき呼び鈴を鳴らす。



「………」



まだ、帰ってないのか。


俺は、その日大学から持ち帰った重要事項が書かれた紙切れだとか、サークルからもらったチラシだとかを見ながら、



2階の彼が帰ってくるのを待った。



待ちくたびれて、うとうとしているところへ、



鉄筋の階段を駆けあがる足音に目が覚めた。

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