その手で触れて確かめて
第10章 お2階さん。( A × N )
智「あり得ない…」
腹ばいのまま頬杖をつくお兄さん。
翔「俺なんか、最初のデートで智くんに…」
お兄さんが投げた俺の枕がカレシさんの顔を鮮やかに直撃し、
カレシさんはもんどりうった。
智「相葉くん。」
「はっ、はい!」
お兄さんはむっくり起き上がると俺の目の前に座った。
智「こうなったら仕方がない。」
…と、申しますと…
智「カズを押し倒せ。」
「えっ!?おっ…おっ…押したお…!」
智「このままじゃお試し期間が終わっちゃうよ?いいの?」
…よくない。よくないけど…
智「カズも待ってるんじゃないの?」
「まっ、まさか…」
だったら嬉し……いや…
智「どうしたの?」
「いえ…」
でも、俺たちは……
俺とカズは…
バイト帰り。
カズは、いつも、てっぺんを30分ほど過ぎた頃、
軽やかに階段をかけ上がって行く足音が聞こえてきて、ドアの開閉音と共に消える。
数分後、俺のスマホが鳴り出し、
耳に当てるとカズの声が聞こえてきた。
和『起きてた?』
「うん。さっきまで課題してた。」
和『うわ…真面目。』
「良かったら一緒にやんない?」
和『…やんない。』
上から聞こえる、どすん、という音。
カズが床の上に寝転る音。
それは、下に住んでいる俺しか感じえない、カズがそこに存在しているという証拠。
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