その手で触れて確かめて
第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )
智side
翔『コイツ、智くんのこと、好きなんだって?』
翔くんの言葉を思い出して、思わず唇を噛みしめる。
…昔、同じようなことがあった。
やっぱり、今と同じように、
肝心な用件も言わないで、ただ、話があるから、って呼び出されて待ち合わせた場所に行ったら、
翔くんが僕の知らない子といて、
この子の話を聞いてあげて、ってだけ言うと、
翔くんはそのまま走り去っていった。
悔しくて、悲しくて、
ずっと黙ってたらその子が悲しそうな顔して言うんだ。
「迷惑でしたか?」って。
そしたら何だかこの子に悪い気がして、
一応付き合ってはみたけれど、
結局は、中学を卒業すると同時にサヨナラしてしまった…
潤「あっ!?すっ、すいません!!やっぱり、ダメですよね?俺、何言ってんだか…」
松本くんは、ワインを一気に飲み干した。
潤「じゃあ…そろそろ出ますか?」
「…うん。」
僕たちは、気まずい雰囲気のまま店の外に出た。
松本くんは大通りに向かって小走りにかけて行き、身を乗り出しタクシーを捕まえてくれた。
僕はタクシーに乗り込むと、ウィンドウを下げ松本くんに言ってしまった。
「また、誘ってね?」って。
同じことの繰り返しになるかもしれないと思いながら…。
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