その手で触れて確かめて
第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )
智side
あれから、松本くんとは何度か食事に出かけた。
行くたびに違う店を探してくれて、
同じ店に行ったことがないってぐらい、色んなところに連れてってくれた。
ただ、敢えて言うなら、
翔くんの話題をふってこられるのだけはイヤだった。
でも、翔くんは、
そもそも僕たちが出会うきっかけになった人。
松本くんも、尊敬する先輩の一人として慕っているし、
僕にとっても幼なじみという間柄。
僕らの間で話題にあがっても無理からぬことだった。
その日も、やっぱり松本くんは翔くんのことを笑顔で話し始めた。
そして僕も、
松本くんの話に笑顔で相づちを打っていた。
潤「あの…大野さん。」
帰り道、
不意に松本くんが僕に話しかけてきた。
「何?」
潤「俺の勘違いだったらごめんなさい。」
「どうしたの?」
潤「その…俺といても楽しくないですか?」
「え…?」
…『迷惑でしたか?』…
松本くんの顔が、
あの日のあの子と重なった。
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