その手で触れて確かめて
第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )
潤side
智「どうして…そう思うの?」
無意識になのか、
大野さんは俺から目を逸らした。
「ごめんなさい。何となくそう見えたんで…」
何となく、なんかじゃない。
大野さんは、
僕に向けるその笑顔の下で、
誰かを見ている…
智「じゃ、気のせいだよ?」
と、あなたは笑う。
今にも泣き出しそうな顔で。
俺は、
その誰かが誰なのかを知っている。
知っててその人の話題をふる。
案の定、あなたはとても苦しそうに笑うんだ。
やめて、って、
泣きそうな顔になるんだ。
でも、俺は止めない。
あなたがその人を想う苦しみに耐えられなくなって、
俺にすがってくれることを願ってるから。
ズルい、って自分でも思ってる。
でも、恋、ってそんなもんなんじゃないかな?
だって、
『恋』っていう字の中には、
下心が隠れてる…
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