その手で触れて確かめて
第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )
智side
「ど…して…?」
潤「有給とってきた。」
松本くんは、簡易椅子に置かれたままだったスケッチブックを持っていて、
さっき僕が描いた絵をこちらに向けた。
潤「これ…俺だよね?」
ぎこちなく頷く。
潤「これも…」
立て掛けた絵の中にも、
スケッチブックに描いたものとは違うアングルの松本くんの絵があった。
「ごめん…外すよ?」
外そうと伸ばした手が、松本くんの手に阻まれる。
潤「いいよ?俺の似顔絵なら目立つだろうから。」
「そんなつもりじゃ…」
何故だか分からないけど、
ここに来てからずっと、
松本くんの顔ばかり描いている自分に気づいた。
潤「繁盛してる?」
「それ、イヤミ?」
潤「そう聞こえたんならごめん。」
松本くんは申し訳なさそうに笑った。
僕は、コンビニで買ってきたお弁当やらパンやらを、店番のお礼と称しておじさんに手渡す。
そう言えば…
「松本くん、お昼は?」
潤「まだ、だけど?」
僕は、松本くんの手におにぎりを握らせた。
「よかったら食べて?」
潤「…いただきます。」
松本くんはおにぎりをあっというまに平らげた。
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