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その手で触れて確かめて

第12章 甘く、透明なオレンジ( M × O )



潤side



それって、イヤじゃないのかな?



段々と辺りがオレンジ色の光に包まれていって、



缶コーヒーを口にする大野さんの横顔もオレンジ色に染まってゆく。



智「あの噂、ホントかな?」



そして、ぽつり呟いた。



「噂?」


智「うん。太陽が沈む瞬間にキスしたカップルは幸せになれる、って。」


「だから、か…」



そう言えば、車の数が増えたような…。



智「そう言えば、翔くんは元気?」


「え?あ、うん。」


智「毎日のろけてない?」


「言われてみれば、付き合いが悪くなったかも?」


智「フフっ。翔くんらしいね?」



さらにあたりは濃いオレンジへと変化していって、


フロントガラスに目をやると、



オレンジの大きな光の玉が地平線へ吸い込まれようとしていた。



智「あー、沈んじゃう。」



俺は、咄嗟にハンドルに凭れ目を細めながら呟く大野さんの体をこちらに向かせて、



驚きのあまりに目を見開くその顔を引き寄せると、








唇を重ねた。






「あ…あの…」


智「………。」



唇が離れたあと、大野さんは黙りこみ俯いてしまった。



てっきり怒らせてしまった、と思いこんでいた俺は、



頭の中で必死に言い訳を探していた。


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