その手で触れて確かめて
第13章 雨の日に恋をして ( A × N )
和也side
その日の俺は、ある人の家に向かう途中だった。
今日の天気予報の雨の確率は40%。
晴れのち曇り、一時雨。
50%以下ならまず傘は持たない。
何故なら、俺の経験上、50%以下で雨に見舞われたことがないからだ。
が、時間を追うごとに強くなる雨足。
適当に軒下を借りて小降りになるのを待つ。
が、ばしゃばしゃ音を立てて降りしきる雨に、
大きなため息が漏れた。
道を挟んで、向かいのコンビニに目をやる。
ビニール傘でも…
ポケットの小銭を寄せ集めるも、
「130円…て…。」
迎えに来てもらう、って言っても、あの人、
今日、授業抜けらんない、って言ってたからなあ…
スマホをポケットから取り出すもまたしまい込む。
刻々と過ぎて行く時間。
止まない雨。
…濡れていこ。
どうせ、家に行ったらタオル借りれるし。
そう思い、一歩踏み出そうとした時だった。
不意に、目の前に差し出されるビニール傘。
雅「はい。これ、使って?」
「えっ?」
誰?
雅「傘、持ってないんでしょ?持ってきなよ?」
傘を差し出してきた男は、
雨の日に不釣り合いな、明るい笑顔を見せた。
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