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その手で触れて確かめて

第13章 雨の日に恋をして ( A × N )



翔「知り合いに頼んで作ってもらったんだ。」



俺のイニシャル『K』を彫り込んだ水晶の丸珠を使った手作りのストラップ。


しかも…



翔「お揃い、な?」



俺の目の前で、翔さんは同じデザインの『S』のイニシャルの入ったストラップをぷらぷらさせた。



「ぐす……翔さん、ありがと。」


翔「なーに泣いてんだよ?このぐらいで?」


「だってぇ……ヒック。」


困ったように笑いながら翔さんは、



泣き出してしまった俺の頭を、わしゃわしゃと撫でてくれた。



「翔さん…大好き。」


翔「俺もだよ、カズ…」


「あっ…」



そう言って抱きしめてくれた翔さん。





この時の言葉に嘘は無かった、って、



ずっと、このまま、



この幸せがずっと続くものだって、







この時の俺は信じて疑ってなかったんだ…







梅雨も明けて、



学校帰りのうだるような暑さの中、



涼を求めて、



俺は通りがかったあのコンビニの中に入った。



雅「あれ?君はあの時の…」


「あ…ども。」



あん時とおんなじ、弾けるような笑顔でアイツが声をかけてきた。


雅「傘、役に立った?」


「まあ…」


アイツは俺の側でしゃがみこんで、コンテナの中の商品を棚に並べ始めた。

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