その手で触れて確かめて
第13章 雨の日に恋をして ( A × N )
「すいません、傘、後で必ず返しますから。」
…今度、翔さんの家に行った時にでも持ってくれば…
翔さんの家を出る頃には雨も上がっていて、
傘をそのまま忘れてきてしまっていた。
雅「いいよ、別に?あげる。」
「え?でももらう理由ないし。」
雅「いいのいいの。もらっちゃって♪」
だから、もらう理由なんてない、ってば。
大きなため息をつくと、
適当な雑誌を手に取り、読み始めた。
雅「いらっしゃい…あっ!こんにちは。」
やけに親しげに声をかけてるな、と思い、入り口をチラ見すると、
背格好が俺と同じぐらいの細身の若い男が入ってきて、
アイツを見、片手を上げ笑うと、こちらに近づいてきた。
雅「もしかして、今日も仕事場に籠るの?」
智「うん。明日の昼頃までに仕上げないとならなくて。」
雅「へぇ…繁盛してんだね?」
その人は、栄養ドリンクを2、3本手にすると、静かにカゴの中に収めた。
智「そうでもないよ?こだわりすぎて逆に材料費のほうが高くついちゃって、いっつも赤字。」
不思議そうに2人の会話を聞いてる俺に気づいたアイツが、
親切にも、その人を俺に紹介してくれた。
雅「この人ね、この近くに工房持ってて、そこでいろんなもん作ってんの。」
「へぇ…」
智「何でも、って訳じゃないけど…」
その人は、照れ臭そうに頭を掻いた。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える