その手で触れて確かめて
第14章 インクルージョン (A × O)
感じのいい子だな…
クラスメートの輪の中に戻ってゆく後ろ姿をしばらく眺めていると、
突然、後ろから肩を叩かれた。
翔「遅いと思ったらやっぱりだ?」
「…ごめん。」
彼は、この学校の卒業生で、英語教師でもあり、
僕の小学校時代の同級生でもある櫻井翔くん。
翔「だから一緒に行こう、って言ったのに?」
「ちょっと探検したかったの。」
翔「探検?方向音痴のクセに?」
と、意地悪く笑う翔くん。
「もー、うるさいよ!?」
翔くんはこっちだよ?と、
笑いながら校長室に案内してくれた。
数日後、非常勤講師として採用されることとなった僕は、
全校集会で挨拶をした後、特に何かしなければならない、ということもなかったので、
校内をあちこち見て回ることにした。
本当は、俺が案内してあげたいんだけど、授業があるから、って、翔くんは申し訳なさそうに笑ってたけど、
僕にとってはむしろその方が良かった。
あ、そうだ、美術室…
翔くんから、大体の場所を聞いてはいたけれど、
そこは、筋金入りの方向音痴な僕のこと。
やば…迷っちゃった…。
何度も何度も目の中に飛び込んでくる同じ景色に、
段々焦りの色を隠せなくなっていった。
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