その手で触れて確かめて
第14章 インクルージョン (A × O)
どうしよう…迷っちゃった。
やっぱり、昼休みを待って翔くんに案内してもらったらよかった、
と、後悔してもあとの祭。
自分がどの辺にいるのかさえ全く分からない。
途方に暮れて、
階段の踊り場の手すりで頬杖をついた。
いっそのこと、昼休みまでここにいようかな?
もしかしたら、翔くんが僕がいないことに気づいて探しに来てくれるかも…。
…って、もし、来てくれなかったら…
と、そんな葛藤を繰り返しながら僕は、その場に座り込んで、
階段の下を覗き込んでいた。
すると、突然、背後から誰かが僕の肩を叩いた。
「ひやっ!!」
雅「わっ!!」
僕の反応と声に、
その誰かも飛び上がって驚く。
あれ…?
…何処かで見た顔…
「あ、あの…」
雅「こんなところで何してんのか、と思って…。」
あ…あの時、グランドでサッカーやってた…
雅「先生…だったんですね?」
「あの…」
あれ?そう言えば、今、授業中じゃ…
「君、授業は…」
雅「サボっちゃいました。」
と、彼は悪びれる様子もなくえへへ、と笑う。
その笑顔は、
初めて会った時に見た、あの笑顔と同じだった。
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