テキストサイズ

その手で触れて確かめて

第14章 インクルージョン (A × O)



「あれ?翔くん、授業は…?」


翔「さっき終わったとこ。」



言われてみれば、階下がざわざわしていた。



翔くんは、ほら立て、と、彼の腕を掴んで立ち上がらせた。



「この子、連れていこうとしてたところだったんだ。」


翔「あ、そう?それはちょうどよかった。」



翔くんは、彼を完全に立ちあがらせてから、



僕にこそ、っと耳打ちした。



翔「また、智くんが迷子になるところだった。」


「んもー、翔くん!?」



僕はニヤニヤ笑う翔くんの背中を思い切り叩いた。



翔「ごめんごめん。美術室、行くんだっけ?」


雅「美術室…?この階の突き当たりの教室じゃん?こんなところで何してたんですか?」


「そ、それは…」



方向音痴が効を奏して、道に迷いました、なんてとても言えなかった。



翔「お前は知らなくていい。さ、行こう?」


雅「櫻井のケチ!!いいじゃん、別に、教えてくれたって?」


翔「櫻井『先生』な?お前、何で俺だけ呼び捨てにしてんだよ!?」


雅「えー?だって、先生っぽくないし。」


翔「ぬわにぃ?」



翔くんは、笑いながら彼の頭を拳でグリグリした。




友達みたいにはしゃぎながら前を歩く2人の姿に、


思わず笑みが溢れた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ