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その手で触れて確かめて

第14章 インクルージョン (A × O)



あれから僕はずっと悩んでた。



相葉くんが翔くんに対して思っていることを、それとなく翔くんに伝えるべきか否か。



別に、相葉くんに口止めされている訳じゃないから、



言う言わないは僕の自由。



でも…



もしかしたら、相葉くんは、僕のことを信用に値する人間だ、って思ったからこそ僕にあんなことを言ったのかもしれない。



「あ…」



画架に立て掛けたキャンバスを落としかけて位置を直そうとした時、



横から誰かの手が伸びてきて、その位置を直してくれた。



雅「何か、いっつもボーッとしてるんですね?」


「考え事してたから…。」



この時間は、またしても翔くんの授業時間だった。


「相葉くん。」


雅「はい?」


「どうして櫻井先生、避けてるの?」



相葉くんは聞いてるのか聞いてないのか、



美術室の机の上に腰かけあぐらをかいた。



「キライじゃないならなんで…」


雅「だって、他人がどうこう出来る問題じゃないから。」



相葉くんは僕と目が合うと慌てて顔を逸らし俯いた。



雅「それなのにアイツ、何でも相談にのってやる、なんて言うから…。」






僕は、涙声で喋り続ける相葉くんの隣に静かに腰かけた。


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