その手で触れて確かめて
第14章 インクルージョン (A × O)
雅「だから、ほっといてほしいんだよね?」
俯き爪を弄ぶ。
雅「俺、実は学校やめようと思ってるんです。」
「え?もうすぐ卒業なのに?」
雅「親父が知り合いの借金の連帯保証人になってて、その知り合いが逃げちゃって…」
「やめて…働くっていうの?」
雅「でも、親父は学校だけでも卒業しろ、って言ってくれてるけど…」
「じゃあ、卒業してからでも…」
雅「…でもそんなことしてたら…もたもたしてたら店が…親父の店が…取られちゃうから…。」
相葉くんは、大きく鼻を啜りながら俯き顔をごしごし拭う。
僕は、
どうしたらいいのか分からず、
膝におかれた相葉くんの手をただ、黙って握りしめていた。
昼休み。
僕は相葉くんを美術室に残して売店へと向かった。
二人分のパンを購入し、階段を上ろうとしたところで、
翔くんに呼び止められた。
翔「相葉もいるんだろ?」
そう言うと翔くんは、僕が驚いて取り落としたパンを拾い上げ、前をすたすたと歩き始める。
美術室の前までくると急にたちどまって振り返った。
翔「のさ、ちょっと話あるんだけど?」
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