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その手で触れて確かめて

第14章 インクルージョン (A × O)



「僕…に?」


翔「先生と生徒が個人的に接するのもどうか、と思うけど?」


「でも…翔くんだって…」


翔「これでも先生と生徒のスタンスで接してたつもりなんだけど?聞いたろ?相葉の家、借金で大変だ、って?」


「うん…」


翔「出来ることなら俺もなんとかしてやりたいよ。昔、サッカー部時代に相葉の親父さんに世話になったからさ?」


「翔くん…。」


翔「先生と生徒じゃなかったらなあ、って、つくづく思うよ…」



翔くんは、



相葉くんに授業に出るよう伝えて、と言ってパンを僕の手の中に握らせた。



去り際に、深入りしちゃダメだよ?と付け加えて。



美術室に入っていくと、


相葉くんは机の上にごろり、と横になって、すうすうと寝息をたてていた。



僕は、着ていた上着を脱ぎ相葉くんにかけてあげた。



相葉くんの頬に残る涙のあと。



指先で触れてみるとまだそこは濡れていた。





その日を境に、相葉くんは僕のところへぱったりと来なくなった。



それどころか、



学校にさえ来ていないらしかった。



翔「相葉?いや…辞めたわけじゃないんだけど…。」


「じゃ、どこか具合でも悪いの?」


翔「俺、担任じゃないから…」



あまりにも淡々としている翔くんに僕は少しイラついてしまった。



「ね…翔くん。」


翔「ごめん、何?」


「いくらなんでも冷たすぎない?」



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