その手で触れて確かめて
第14章 インクルージョン (A × O)
結局、相葉くんは退学を取り止め、
卒業までバイト出来るようにと学校側に許可をとった。
翔「うーん…」
その、バイトの許可申請書を受けとった、生活指導を担当する翔くんは、
退学も取り止め、授業も真面目に出席している相葉くんに、
唸りながら首を傾げた。
翔「ね…智くん。」
「えっ!?な、何、翔くん!?」
翔「智くんさあ、相葉に何か言った?」
「え…と、学校、辞めちゃダメだよ、とは言ったけど…」
疑いの眼でじっ、と見つめてくる翔くん。
「ほ、ホントだってば!」
翔「ま…いいけど?」
翔くんは、僕に背を向けると、ボソッとこう言った。
翔「アイツ、最近、俺のこと『櫻井先生』、って呼ぶんだよね?」
「翔くんがそう言え、って言ったんでしょ?」
翔「言ったけどさあ…何だか…」
むずむずするんだよね、この辺が、と、
翔くんは首もとを掻いてみせた。
そして、迎えた卒業式の日。
僕は、美術室で一人絵を描いていた。
卒業式に相応しく、その日は雲一つない青空で、
開け放たれた窓からは、
まだ少し冷たい春の風が、生徒たちの笑い声を乗せ僕の耳へと運んできた。
それとは別に、
パタパタと美術室に向かって走ってくる足音がして、
勢いよく美術室のドアを開けた。
雅「大野センセ、めっけ!!」
相葉くんだった。
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