その手で触れて確かめて
第19章 俺のアニキ(M × S )
俺は目を疑った。
あの気難し屋の智が、初めて会ったばかりだっていう愛人の子供と握手を交わしている。
しかも、顔を覗き込んだりして嬉しそうに。
見ていられなかった。
見ていられなくて、
俺は二人に背を向けリフティングを始めた。
智「みんなで続きしようか?」
無言でリフティングを繰り返している俺の目の前に、智がヤツの手を引いて現れた。
は?今なんて?
俺はいきなりな智の提案にリフティングを止めて、アイツを睨み付けた。
会ったばっかのコイツとこの俺が、何で仲よくサッカーなんかしなくちゃなんねぇんだよ!?
いや……待てよ?
もしかしたらコイツ、案外サッカーなんてやったことないかも?
当時、ヤツはガリガリ痩せてて、到底、スポーツなんてやっていなさそうに見えた。
それに、この辺りじゃ、俺より出来るヤツなんてそうそういないしな?
そんな傲りから俺は、それに乗じてコイツに身の程を解らせるいい機会かもしれない、と、ボールをアイツに渡してしまった。
だが、それがそもそもの間違いだった。
アイツのドリブルからゲームは始まった。
アイツはそんなにスポーツが得意ではない智はいうまでもなく、俺でさえも難なくかわした。
くそ…こんなはずじゃ…
結局、そのままゴールを決められてしまった。
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