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その手で触れて確かめて

第19章 俺のアニキ(M × S )



あとは何度やっても同じだった。





さっきまで、死んだ魚のような目をしていたヤツとは違う。



ボールを自在に操りゴールネットを揺らすアイツは、水を得た魚のように生き生きしていた。



……認めねぇ。



アイツが俺の兄貴だなんて、





絶っっ対に認めねぇからな!!





「あーあ、つまんねぇの。こんなワンサイドゲーム。」



悔しくて、溢れそうになる涙を二人に見られないように俺は、



塾の時間だからと中庭から逃げるみたいに走り去った。


着替えを済ませ気晴らしをするため少し早めに家を出ようと中庭を通りがかると、



智が芝生の上で膝を抱えたまま空を仰ぎ見るように気持ち良さげに目を閉じていた。



あんな智を見るのは久しぶりだった。



口を開けば毒を吐くものの、黙っていれば深窓の令嬢で通せそうなぐらい線の細い智。



正義感が強くてプライドが高くて賢くて、でも優しくて、



誰よりも綺麗で…。



世界中の誰よりも愛して止まない、大切な存在…。





智に引き寄せられるように中庭に足を踏み入れようとすると、



その智をじっと見つめているもう一人の目に気づいて足を止めた。




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