その手で触れて確かめて
第19章 俺のアニキ(M × S )
月明かりに照らされ舗道に伸びる影。
少し遅れてついてくる雅紀の足音と影。
俺が止まると止まって、また歩き出すと歩き出すから、距離が中々縮まらない。
じゃ、ずっと止まってたら止まってんのか、と思ってその場に突っ立ってると、
つかつかという足音と共に近付いてきた影が、
俺よりほんの少し背の高い影が俺の影と重なる。
「まさ…」
雅「置いてくなよ、俺を…」
細く見えて、でも、筋肉質な雅紀の腕が俺の体をガッチリと絡め取る。
俺の体をフワリと包み込むタバコの匂い。
出会った時と変わらないタバコの匂い。
止めて?って言っても、ヤったすぐ後とか、持ち帰ってきた仕事に煮詰まるとタバコに手が伸びる。
「吸いすぎだから。」って取り上げても、どこからともなく持ち出してきてはプカプカ。
でも、安心すんだよな?その匂いを嗅ぐと。
雅紀が側にいるんだな?って気がするから。
「離れてくんない?鬱陶しいから。」
雅「冷たいな……」
「冷たくないの。腹減って死にそうなの、俺は!」
雅「潤の体…凄く冷たい。」
さらに腕に力が籠められ、雅紀の鼓動が伝わってくる。
雅「このままだと凍え死ぬぞ?」
俺の体を強く抱きしめる雅紀の左手に光る指輪。
その指輪に触れると凄く温かくて…また、甘えたくてつい…
…泣きそうになる。
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