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その手で触れて確かめて

第1章 白雪姫 (A × O)



自他共に認める馴れ馴れしい悪友・岡田のお陰で、


彼・大野智のことを知っていくことができて、



この頃、学校に行くのが楽しくて仕方がない。



けれど、



実際のところ、日々親交を深めているのは岡田だけで、



俺は、彼の側に近づくことすら出来なかった。





そんなある日の昼休み、


誰もいない教室の自分の席で、


初夏の陽射しの中、開け放たれた窓から吹き込む風に煽られてはためくカーテンの側で、うたた寝する彼を見かけた。



俯せの彼の顔の下には六法全書。



いつもは真剣な顔付きで読み耽っているのに、



今は枕代わり。



俺はいつものように自分の席に座って後ろを向き、



指でフレームを象るように四角を作って、



その中に彼の姿を収めた。


そうやって、彼の姿をいくつも自分の脳内のフレームの中に収め、



ことあるごとに引っ張り出して来ては見入っている。





…俺、ちょっとキモいかも…。



と、自嘲気味に笑う。







話しかけようにも近寄れなくて、



ずっと見ていたいのに眩し過ぎて直視出来ない。







俺は、羽根を休めるため迷い込んできた天使の寝顔を、





人の気配を感じるまでずっと眺めていた。




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