その手で触れて確かめて
第1章 白雪姫 (A × O)
彼との距離を全く縮められないまま夏休みが過ぎ、暑さも和らいだ頃、
ホームルームで、文化祭の出し物についての話し合いが持たれた。
テストが終わったばかり、ということもあって、
教室はお疲れムードが充満していて、
いつもは賑やかしいあの准一さえ、机に突っ伏してシカトを決め込んでいた。
あれよあれよと言う間に、
出し物が決まり、
後は誰が何をするのか、という話になっていて、
イヤでも皆、話し合いに参加し始める。
知らない間に、とんでもない役割を押しつけられても困る、といった体で。
「白雪姫?」
「冗談だったんだけどなあ…」
どうやら、取り分けてやる気の無さそうにしてた准一が意見を求められて、
適当に答えて、そう決まったらしい。
「俺は知らないぞ?」
「雅紀、冷たいこと言うなよ〜?」
すると、不意に准一が後ろを向く。
「…うってつけのヤツがいた♪」
ワルい顔してんなあ。
まさか、とは思うけど…。
ちらと、後ろを見ると、
彼はいつものように六法全書を真剣に読んでいた。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える