その手で触れて確かめて
第3章 歪な夜の夢 (O × S × M)
朝、目が覚めると、
部屋の中には俺だけしかいなくて、
昨夜、一糸纏わぬ姿で、
汗だくで乱れまくっていたのが嘘のようにキチンとパジャマを着てベッドに横たわっていた。
記憶の糸を手繰り寄せようとすると、こめかみに針を突きたてられたような痛みが走った。
動くたび、振動で伝わる痛みを抑え込むように頭を抱えながら階下のリビングに向かった。
「おっ!?珍しい!!今日は早いじゃん!?」
白シャツにネクタイ、という出で立ちで真っ先に翔が声をかけてきた。
「大袈裟だろ!?しょっちゅう、って訳じゃねぇんだよ?潤の朝寝坊は!?」
ソファーで足を組み、新聞を広げていた智が、
しかめっ面で翔を見上げた。
「そうなの?」
「そうなんだよ?翔くん。」
「ふーん?」
翔は智の目の前に置かれたコーヒーカップを持ち上げ、口に運んだ。
「あっ!!お前、それ俺んだって!?」
「いーじゃん、一口ぐらい。」
智に膝裏に蹴りを入れられた翔がよろめいた。
「もー、口も手も出るんだもんなあ…」
「出たのは手じゃねぇ、足だ。」
「同じだって!?」
顔をしかめながら、足を擦る翔が俯いた瞬間に見えた、
項に残る赤い3本の筋。
途端、甦る、
低く、甘く、耳元で囁く声。
「やっと繋がったね?俺たち。」
『歪な夜の夢』end.
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