その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
俺は子供の時からすごい痩せてて、顔立ちも女っぽくて、
ズボンを穿いていなかったら女とよく間違われていた。
翔と初めて会ったのは中1の秋。
親父が俺らの名前を呼ぶまで、塾の時間まで余裕があった俺と潤はサッカーに興じていた。
俺らの名前が順に呼ばれ、順に振り向くと、
親父が、背格好が俺と同じぐらいの少年を連れて来ていて、
俺と潤がそいつは誰なんだ?とばかりにきょとんとしていると、
隣にいた親父が、お前たちの兄弟だ、と説明してくれた。
すると潤は、普通、同世代の子供が見せないような強烈な嫌悪感を露にし、
俺は恐る恐る歩み寄って、親父の顔と翔の顔を見比べた。
俺、もう一人弟がいたんだ、って思ったら、途端に嬉しくなって、
翔に向き直り、手を差し出して握手を求めた。
「宜しく、翔。俺、智。君のお兄ちゃんだよ?」
初対面の人間にいきなり呼び捨てにされ不快に思ったのか、
翔は差し出された俺の手を、黙ったままじっと見つめていた。
やっぱ、怒らしちゃったかな?
不安になって顔を覗き込む。
「…どうした?」
俯いたまま、頭をぶんぶん振ると、
翔は俺の手をそっと、握り返してくれた。
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