その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
翔は、どうにか握手はしてくれたものの、手を離し、すぐに顔を背けてしまった。
やっぱ、怒らせちまったか…
いきなり、お兄ちゃんです、って言われてもピンとこないよな?
「脅かしてごめん。怒った?」
翔はそっぽを向いたまま、ぶんぶんと首を振る。
「良かった…。」
その時の翔の横顔が、耳まで真っ赤だったことは今でも忘れられない。
なんだ、恥ずかしいだけか。
俺は途端にスゴく嬉しくなって、翔の両手を握った。
「翔、サッカー、できる?」
翔は無言でこくり、と頷くと、俺は翔の腕をぐいぐいと引っ張っていき、
無言でリフティングを繰り返している潤の前に連れてきた。
「みんなで続きしようか?」
俺の提案に潤はリフティングを止めて、
眼力があった潤は、さも、汚いものでも見るような目で翔を睨み付けた。
だが、潤は素直にボールを翔に渡し、
翔のドリブルからゲームは始まった。
ゲームが始まった途端、潤が横から奪い取ろうとするも、難なくかわし、
もちろん、サッカーは愚かスポーツ全般が得意という訳ではなかった俺はいうまでもなく、
翔はそのままゴールを決めてしまった。
そのあとも、何度やっても同じだった。
そのうち潤はつまんねぇ、と捨て台詞を残し、
塾の時間だからと中庭から立ち去った。
荒い息を吐きながら、芝生の上に座り込んでしまった俺は、ボールを持ったまま立ち尽くす翔に声をかけた。
「翔、すごいな!!うまいじゃん?」
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