その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
俺にもう1人弟がいた。
その事実に浮かれいた俺は、
これから始まるであろう、兄弟3人での生活に、
ただただ、胸を踊らせていた。
当の弟2人がどう思っていたか、なんて、
これっぽっちも考えないで。
着替えを済ませ、何気に中庭がよく見える窓を覗くと、翔と潤が向かい合って話をしていた。
二人の表情まではよく見えなかったけど、談笑しているようには見えなくて、
そのうち、翔が手の中のボールを投げ捨てて、
潤に背を向けた。
そんな翔に、潤が何やら言葉をかけ、翔が振り向いた刹那、
俺は、あっ!!と思わず声をあげてしまった。
潤が、足元に転がってきたボールを翔めがけて蹴り飛ばしていた。
俺は急いで階段を走り降り、中庭へと急いだ。
「おい!!何やってる!?」
鞄を放り投げ二人の間に割って入っていった時、
再びボールを蹴るため少し後ろに下がった潤と目が合った。
すると、潤は小さく舌打し、鞄を脇に抱えるようにして走り去っていった。
「ったく、あのバカ…」
見る間に小さくなっていく潤の後ろ姿を見ながら毒づく。
そして、振り向き、頬を赤く腫らして口元を拭っていた翔の元へと駆け寄り、声をかけた。
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