その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
「大丈夫か?」
翔は俯きながら顔を逸らした。
「赤くなってんな?早く冷やさないと…」
と、翔の頬にそっと触れた途端、翔はびく、と体を震わせ、俺の手を避けるように体を離した。
「だ、大丈夫だから。それより塾は…?」
「それどころじゃないだろ!?」
俺は翔の腕を掴むと足早に歩き出した。
「え?…あの…一体…?」
訝る翔の手を掴んだまま家の中へ入っていって、
ある部屋の扉の前まで来ると翔の腕を離し、振り返る。
「ちょっと待ってて。」
そう翔に言い置き扉をノックする。
「お父さん、智です。ちょっとお願いがあるんですけど。」
「何だ?もう塾に行く時間だろう?」
「そんなことよりお父さん、病院に行きたいんで車出して貰っていいですか?」
「病院?具合でも悪いのか?」
「僕じゃなくて。翔が、さっき一緒にサッカーをしてた時に怪我をしてしまって…。」
「まったく…しょうのない奴らだ。」
「じゃあ、いいんですね?」
「そういう理由なら構わん。使いなさい。」
「ありがとう、お父さん。」
ぐずぐずしている翔に目で合図すると、再び腕を掴み歩き出した。
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