その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
帰途につく車の中で、俺はずっと考えていた。
素直で甘えん坊の潤が、あんなことするなんて…と。
3人でサッカーをしていた時、翔に向けていた目。
…あれは翔を嫌悪する目だったんだ。
そういう俺だって、内心複雑だった。
親父が外で作った子供なんて、って。
でも、俺、思ったんだ。
こんな境遇に生まれついたのは翔のせいじゃない、って。
翔が悪いんじゃない、って。
潤だって、頭ん中じゃ分かってるはずなのに、
あんなこと…
「あいつ、あんなことするヤツじゃないのに、何だって…」
前方を走る車のテールランプを見ながら、つい口をついて出てしまった俺の呟きに、翔はがっくりと肩を落とした。
「あ、ごめん。翔のせいとかそういう意味じゃないから。」
少しだけ顔を上げ、ごめんなさい、僕が…と、小さな声で言うと、
翔は大きな目からぽろぽろと涙を溢した。
えっ!?ウソ…泣くなんて!?
「翔、ごめん!ホントにごめん!!」
やがて、声をあげ泣き出してしまった。
ったく、俺としたことが…
そして、家に着くまでの間、翔の背中を擦ったり頭を撫でたりしながら、
不用意に放った自分の言葉が翔を傷つけしまったと、
俺は深く反省していた。
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