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その手で触れて確かめて

第1章 白雪姫 (A × O)



文化祭当日、


大野智は、衣装に着替えるだけでなく、


本格的にメイクまでするべく、



女性教師たちが待ちかまえる保健室へと向かった。



1時間ぐらいして、


準備の整った他のキャストたちが待ち構える教室へ、



薄いピンク色に白いレースをふんだんに施したドレスに身を包んだ彼が戻ってきた。



その彼が教室のドアを開けた途端、


その姿を目にした誰もが息を飲んだ。



薄茶色のロングヘアーを内巻きにしたウィッグにティアラ、



付けまつ毛やカラコン、


薄いピンクの口紅を引いた、どこをどう見ても完璧な女装…



いや、





女の子だった。



大野智は、自分の女装した姿に恥じらう様子もなく、



優雅にドレスの裾を捌きながら適当な椅子に腰かけ、



自分の姿に呆けたように見惚れるクラスメートたちを威嚇するように睨み付けていた。



「へえ…正に『姫』じゃん?」



岡田が嬉しそうに呟く。


そんな中でも俺は気付いてしまった。



俯き、溜め息を漏らす彼の姿に。




そして、思わず漏らした彼の本音の言葉を思い出す。



『まあ、女子がいないわけだし、仕方ないんだろうけどね?』

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