その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
その日は翔の帰宅がいつもより遅くて、
もしかしたら亀梨くんの後でも追って…とか、
あり得ないことばかりが頭を占めていて、
勉強にも全く身が入らなかった。
階段の踊り場の窓から外を眺めたり、用事もないのに玄関の側を通ってみたりして落ち着きのない俺の姿を見て家政婦が、
食事の支度ができましたけど、先に召し上がりますか、と聞いてきた。
「翔と一緒に食べるから。」
と、言うと、本当に翔さまと仲がよろしいんですね?
って、半ば茶化すように言うもんだから違う、と突っぱねると、
俺の心配をよそに、翔がひょっこり帰ってきた。
「ただいま。あ、いい匂い。」
「お、お帰り。遅かったじゃないか?」
慌てて新聞を広げながら、何事もなかったかのようにソファーに座った。
翔は、笑いを堪える家政婦と目が合うと、
得心したかのようににっこり笑いながら俺を見た。
「お待たせ。食べよ?」
「べ、別に待ってねーし?」
「あ、そう?俺、もう腹ペコなんだけど?」
「しょうがねぇな。一緒に食ってやるよ。」
と、やっぱり、何事もなかった風を装って、
2人でご飯を食べた。
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