その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
風呂から上がって、髪を乾かしながら参考書を広げていると、
翔が何となく俺と話がしたくなったのだと言って、パジャマ姿で俺の部屋にやって来た。
「お前、あわよくば、ここで寝るつもりだろ?」
すると翔は、ペロリ、と舌を出しながら強引に部屋に押し入ってきて、
ローテーブルの側にちょこんと座った。
「ごめん、勉強してた?」
「あ、いや、ちょっと気になるところがあって…」
慌てて参考書を閉じる。
「邪魔なら戻るけど…?」
「ん?いいよ、別に?」
翔に嘘をついた後ろめたさもあってか、
そのまま参考書を片付けてしまった。
「潤はまだ帰ってないのか?」
慌てて話題をふる。
「潤ならさっき、帰ってきたみたい。」
「ったく、ホントに懲りないヤツだな?」
この時の潤は学校でもめ事を起こしていて、親父の力でどうにかしたものの、
生活態度は全く変わらなかった。
「それがさ、マジだったんだよ?」
「くっだらねぇ。で、どうなったんだよ?」
「それがさあ…」
やがて話は、本当に下らない、どうでもいいような内容のものになっていって、
俺は、翔が元通り、元気になってくれた安心感から、
睡魔に根負けしてしまった。
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